お寺や博物館で見かけるたびに、何本もの腕を持つその姿に圧倒されたことはありませんか?千手観音は「なんとなく知っている」けれど、「なぜあんなに手が多いのか」「どんなご利益があるのか」まで知っている人は、意外と少ないものです。
じつは、千の手と千の眼には深い意味があります。千手観音は、あらゆる場所であらゆる人を同時に見守り、救いの手を差し伸べるために、その姿が生まれました。手の数にも、真言(マントラ)にも、すべて理由があるのです。
この記事では、千手観音のご利益・真言・手の数の意味から、国宝を祀る有名なお寺まで、ひとつひとつわかりやすく解説します。読み終わるころには、次にお寺を訪れたとき、千手観音の前でもっと深く手を合わせられるようになっているはずです。
千手観音とは?

千手観音は「せんじゅかんのん」と読みます。正式な名称は千手千眼観自在菩薩(せんじゅせんげん かんじざいぼさつ)といい、少し長めの名前です。
この世に生きるすべてのものを救いたいという、深い慈悲を持つ仏様(菩薩様)です。
千の手と千の眼によって、悩み苦しむ人々を見つけては手を差し伸べる——その限りない功徳と慈悲から、大悲観音(だいひかんのん)とも呼ばれています。また、観音の王を意味する観音王(かんのんおう)や蓮華王(れんげおう)という別名も持っています。
千手観音のご利益
千手観音のご利益は、非常に幅広いのが特徴です。災難除け・延命・病気治癒など現世のあらゆる悩みに応えてくれるとされており、とくに夫婦円満・恋愛成就・安産・子宝成就に功徳があると言われています。
ちなみにですが、後生善処のご利益もあると言われています。
後生善処:ごしょうぜんしょ
現世で亡くなったあと、来世でも幸せに過ごせること
千手観音が守護本尊の生まれ年
子年の守護本尊です。子年生まれの人の開運、厄除け、祈願成就を助けるとされます。

千手観音の特徴
千手観音の最大の特徴は、手の数が千本あることです。そして手のひらには眼をもっています。
千の手と千の眼を持つことから、「千手千眼観自在菩薩」という正式名称がついています。
千手観音の手の数
千手観音の像では手の数は42本が一般的です。42本の内訳は、本手が2本・脇の手が40本の合計42本です。
脇手の1本で25の俗世界で生きものを救済する、と考えられています。40本 × 25=1,000になるため、40本の脇手を表現した千手観音像が多い理由です。
千手観音で、木彫りの仏像をネット検索したら、一番高価なもので400万円オーバーのものがありました!!(…お高い、誰が買うんでしょうね…)
下記ご参考
千手観音が祀られている有名な寺院
千手観音を本尊として祀られている寺院があります。
代表的なお寺を5か所ご紹介します。
神奈川県の千手観音(長谷寺)
神奈川県鎌倉市の長谷寺(はせでら)は、「鎌倉の長谷観音」として親しまれているお寺です。本尊の十一面観音菩薩像は高さ約9.18メートルで、木造の観音像としては国内最大級のひとつ。境内から相模湾を望む眺望も美しく、観光と参拝を兼ねて訪れる人が多いお寺です。
長谷寺 公式サイト
https://www.hasedera.jp
滋賀県の千手観音(観音正寺)
滋賀県近江八幡市の観音正寺(かんのんしょうじ)は、西国三十三所第三十二番札所として知られるお寺です。石段を登った山頂に境内があり、本尊の千手観音坐像は身丈約6メートルにおよぶ大きな像。インド産の白檀(びゃくだん)から彫られた珍しい仏像で、参拝者が間近で対面できます。
観音正寺 公式サイト
https://kannonshoji.or.jp
大阪府の千手観音(葛井寺)
大阪府の葛井寺(ふじいでら)には、国宝の十一面千手千眼観音菩薩像(じゅういちめん せんしゅせんがん かんのんぼさつぞう)が祀られています。
正面の合掌手40本に、小手1001本あり、合わせて1041本もの腕があります。1000本以上の手が表現された千手観音像は、国内で唯一です。
葛井寺 公式サイト
https://www.fujiidera-temple.or.jp/
京都府の千手観音(三十三間堂)
京都府の三十三間堂(さんじゅうさんげんどう)の正式名称は蓮華王院(れんげおういん)。
本堂の通称を三十三間堂と呼んでおり、堂内の柱が33本あるのが特徴です。観音菩薩が三十三の姿に変化することに基づき三十三間堂と呼ばれています。
本尊千手観音坐像はじめ千体千手観音立像など、祀られている像すべてが国宝です。1001躯の観音像が並ぶ堂内はさながら『仏像の森』に迷い込んだみたいです。
三十三間堂 公式サイト
http://sanjusangendo.jp/
奈良県の千手観音(唐招提寺)
奈良県の唐招提寺(とうしょうだいじ)には、国宝の千手観音隆像(せんしゅかんのんりゅうぞう)が祀られています。
大脇手42本、小脇手911本あり、合わせて953本もの腕があります。脇手がバランス良く配置されていることから、もとは1000本の腕があったと考えられています。
唐招提寺 公式サイト
https://toshodaiji.jp/
千手観音の真言
千手観音の真言は、オン・バザラ・タラマ・キリクです。
真言とは、サンスクリット語の「マントラ」を日本語に訳した言葉で、「仏の真実の言葉」を意味します。心を守り・解放するという2つの言葉(manas/trāṇa)が組み合わさって生まれた言葉で、短い文言の中に仏の教えが凝縮されています。
唱えるときは、静かに目を閉じ、心の中で念じるか、声に出してゆっくり繰り返します。回数に決まりはありませんが、3回・7回・21回と奇数で唱えるのが一般的とされています。日常の祈りや、お寺参拝の際に手を合わせながら唱えてみてください。
餓鬼道(六道)の救済を行う千手観音
仏教では、人間が善悪の業因(ごういん)によって行きめぐる六つの世界があると考えられています。
六つに分けられたその世界を「六道(ろくどう・りくどう)」と呼び、楽しみが多い順に並べると次のとおりです。
楽しみが多い順
・天道(てんどう)
・人間道(にんげんどう)
・修羅道(しゅらどう)
・畜生道(ちくしょうどう)
・餓鬼道(がきどう)
・地獄道(じごくどう)
餓鬼道に生まれ変わる人は、欲望のままに生きていたり、自己中心的な生活を送っていたりした人です。
食べることが叶わず喉の渇きも潤せないため、餓えと渇きに苦しみ続けます。
そんな餓鬼道に迷う人々を、千手観音は救うと考えられています。
よくある質問(FAQ)
まとめ:千手観音はあらゆる人々を見守る
千手観音は、千の手と千の眼によってあらゆる人を見守り、救いの手を差し伸べる仏様です。ご利益は夫婦円満・病気平癒・恋愛成就など幅広く、子年生まれの方の守護本尊でもあります。その姿には深い意味があり、42本の手が表す1,000の救済、餓鬼道の人々を救う慈悲の心——どれも千手観音の本質をあらわしています。
まずは、紹介した5か所のお寺のなかから、足を運びやすい場所へ行ってみてください。鎌倉の長谷寺、近江八幡の観音正寺、大阪の葛井寺、京都の三十三間堂、奈良の唐招提寺——どのお寺の千手観音も、写真では伝わらない迫力と、静かな安らぎを感じさせてくれます。参拝の際は、真言「オン・バザラ・タラマ・キリク」を心の中で唱えてみると、また違った体験ができるはずです。
千手観音の魅力は、時代や年代を超えて、今も多くの人の心をつかみ続けています。手を合わせながら「救われたい、守られたい」と感じたとき——その気持ちそのものが、千手観音との縁のはじまりかもしれません。
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